この写真は、鈴川砂山の閻魔堂(えんまどう)に安置されている、閻魔大王の座像です。
像は道服をまとい、右手に勿(しゃく)をもち、大きさは等身大で、彩色されていますが、木地のみえるところもあります。私たちがこどものころから、恐ろしい人の代表として印象づけられてきた通りの姿をしています。
ところが、大王が密教の十二天のうちの焔摩天(えんまてん)として、両界曼陀羅外(まんだら)に位置をしめた場合には、水牛に乗って右手に人頭憧(にんずどう)をもち、二天女をはべらせ、刀と戟(ほこ)を持った2匹の鬼を従えるという、優しい姿に変わります。
閻魔大王は、インドの鉄囲山(てっちせん)という、高い山の外側にある地獄の世界に、18人の役人と8万人の獄卒をひきいて住んでいるといいます。そして生きているときに悪い事をした死人がそこへ行くと、これを審判して罰を加えるといいます。
地獄の大城のまわりは、黒金(くろがね)の高いへいをめぐらせてあります。4つの門の入口には2本の旗を立て、右の旗の上には人頭の形をつけて闇黒天女とし、左の旗には泰山府君の頭を表わしたものをつけてあります。この人頭はひと目にらんだだけで、罪人の罪を見わける力をもっているといわれます。
大王は、そばにいる魔人のもっている記録をみて、罪福を決めて処刑したり、生きているとき善行のあった人は極楽へ送るという、地獄の主宰者だと仏教では教えています。 (鈴木富男稿)
*解説
・曼陀羅=仏を安置した壇とか絵図。
・人頭憧=どくろの旗。
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