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公害、防災対策の調査結果

富士市の大気汚染の現況

広域汚染ではない一部の企業による「局地的汚染」
 既存の工場から吐き出されている亜硫酸ガス(SO2)の濃度は、高いときには他都市の汚染地区に匹敵する数値にまで近づきますが、長時間は持続していません。最低値は、比較的低く、大きな変動がみられます。これは当地区の特徴であり、地形からくる気象の変化によるものと見られます。降下じんの量は年々減少してきていますが測定個所によっては溶解性物質の増大も考えられます。
 大気汚染の測定結果をみますと、以前は富士市全域の「広域汚染」と推察されていたものが、環境調査、発生源調査の推進から“一部の企業”による限られた地区への汚染、すなわち「局地的汚染」であることが明らかにされました。
〔大気汚染の年次別推移〕
 富士市の大気汚染の状況調査は、昭和39年から静間県衛生研究所が実施しています。また、昭和42年8月からは「ばい煙規制法の指定地域」をけんとおするための予備調査として、厚生省が県に委託して実施したものがあります。
 昭和42年度からは、県は公害研究所が市は公害課がそれぞれ大気汚染を測定しています。
 この調査結果から富士市の大気汚染状況の傾向をみますと、次に図示しますようにイオウ酸化物は、年毎に高くなってきています。
 連続自動記録計による亜硫酸ガスの濃度の測定結果は、昭和42年8月から12月までの4か月間、元吉原中学校=鈴川浜町=、富士市保健所=青島=、富士高校=松本=で測定したものがありますが、4か月の1時間平均値は、富士高と保健所が0.05ppm、元吉原中学校が0.04ppmとなっています。
 降下粉じんの測定ほ、デポジツトゲージで昭和42年8月から12月までの4か月間、厚生省の委託をうけ、市内12か所で測定しましたが、4か月間の平均値は、富士保健所が13.31トン(1平方キロメートル当り、1か月間の降下量)といちばん量が多くなっています。市内12ヵ所の平均は7.45トンと全国的に見て(指定されている地域)平均値を下回っています。
 これは、石炭燃焼から重油燃焼への変化が最大の原因だといわれています。しかし、富士市の場合、石炭によるばいじんなど、不溶解性物質(タール分・鉄、銅、砂じん)の減少は考えられますが、そのほかの溶解性物質は、現状のままでは減少するとは限りません。
- 図表あり -
( 図表説明 ) イオウ酸化物の年次別推移
( 図表説明 ) 降下粉じんの年次別推移
- 写真あり -
( 写真説明 ) この煙の中にも“有毒ガス”が……

自動記録計による市内6か所の測定結果 昭和43年.6月〜9月

自動記録計による市内6か所の測定結果 昭和43年6月〜9月
 下表は富士市公害課、本年6月から9月にかけ、市立第3中学校、富士保健所など市内6ヵ所、の連続自動記録計で大気汚染(亜硫酸ガス)を測定した結果です。
 この調査結果からもわかるように、これまで、富士市全域の「広域汚染」と推察されていたものが、1部の企業による「局地的汚染」であることが、明らかにされました。
■環境基準案
(大気汚染防止のため、空気中の亜硫酸ガスを規制する基準で、厚生大臣の諮問機関である生活環境審議会が出した答申です)
1.年間を通じて、総時間数に対し1時間値が0.2PPm以下である時間数が少くとも99パーセント以上維持され、かつ1時間値の年平均値が0.05PPmをこえないこと。
2.年間を通じて、総日数に対し1時間値の1日平均値が0.05PPm以下である日数が少くとも70パーセントないし80パーセント以上維持されること。
3.年間を通じて、総時間数に対し、1時間値が0.1PPm以下である時間数が少くとも88パーセントないし93パーセント以上維持されること。
- 図表あり -
( 図表説明 ) 自動記録計による市内6か所の測定結果

既存工場も公害防止に積極策を既存公害の防止対策
 富士市の公害のうち、とくに大気汚染の実態については、単的にいって心配される段階にあるといえます。
この対策としては……
 1.燃料から煙突までの過程で、汚染物質を除去する
 2.排出された汚染物質を大気拡散、希釈する
汚染の実態が広域汚染ではなく、局地汚染である以上、関係企業はもとより、行政、市民総ぐるみの対策で、これを改善すべきです。
具体的には……
1.燃料は低イオウ分の重油を使用する
2.煙突を高くする
3.集じん装置、排煙処理施設を設置するこの対策により、市民の健康保持と生活環境の保全をはかり、あわせて、産業の発展をめざして、前向きに既存公害の防止対策に取り組みます。

既存工場の発生源は…

 公害は発生してから防止することは困難です。公害を未然に防止するために、発生源と考えられる施設を定め、この新設するときや変更するとき事業者は県知事に特定施設の届出=静岡県公告防止条例=をしなければいけないことになっています。
 富士市における「特定施設」の届け出は、昭和39年から実施され、現在、市公害課がその実態のはあくを急いでいます。
 また、大気汚染の発生源となっている燃料、燃焼施設についても、144工場(伝熱面積30平方メートル以上)の実態調査を完了しました。
 それによりますと……
- 図表あり -
( 図表説明 ) 燃料使用状況
( 図表説明 ) 燃料使用料

長期の汚染呼吸器系に障害

実態の調査、究明を急ぐ

大気汚染の人体と植物への影響
〔人体への影響〕
 富士川火力発電所計画をけんとうするにあたって、心配される問題の一つは、大気汚染による住民の健康への影響です。
 これは、いろいろな問題を含んでいますので、その将来を予測することは、たいへん困難です。
 現在の富士市の汚染濃度=別項=は短期間の調査によるデーターの分析しか得られませんが、わずかに、0.05PPmをこえるところもあり、ある地域においては平均値0.05PPmていどが推定されていますので、この分折を急いでいます。
 既存の大気中の亜硫酸ガスの含有量と火力発電所からの排出量、ならびに同地の地形的な要因(とくに夏に多い南風)を考えると、数多くの問題が提起されます。
 とくに、こんご、考えていかなければならないことは、現在、健康な住民に対しての大気汚染の影響です。
 例えば、亜硫酸ガス0.5PPm、あるいは1.0PPmであっても、とくにそれが重大な問題になるとは考えられませんが、大気汚染がある期間…例えば3〜5年間継続した場合には、呼吸器系を中心とした疾病増加がおこります。さらに、それが肺気腫や肺障害にいたったものには0.5PPm〜1.0PPmの汚染が致命的な濃度になることは、過去、ロンドンなどの諸外国で起きた公害による惨事が、如実にそれを物語っています。
 こんご、富士市において、慢性的影響を起すほどの大気汚染が起るか、どうかは、現在市内に設置してある自動測定装置によって、より多くのデーター集め、それをもとに行政機関、専門家、企業、住民が一体となって、原因の追究や医学的な究明をしていくことが必要です。
〔植物への影響〕
 既存の大気汚染に、富士川火力による汚染が加わった場合には、常識的には植物の成育に直接、間接に、悪い影響をおよぼすことが想定されます。
 すなわち、汚染物中の亜硫酸ガス対策粉じん処理に集約されますが、その被害の有無と大小は、「ガス濃度×接触時間」によります。これは多くの実験報告からいろいろの植物の抵抗指標が示されており、とくに敏感とされているアルファルファ(牧草の一種)については、0.4PPmが7時間続けば「煙斑」を表わすといわれています。
 そこで、これらの諸実例から当地域の植物群がどのような制約条件を受けているかを総合すると、より安全を確保するため、こんどの監視体制、防止対策に万全を期すべきだと考えます。
 因みに、富士市の工場から吐き出されているガスは…
○紙・パルプ工業
 亜硫酸ガス、二酸化炭素、塩素、メリカプタン、硫化水素、ジメチルサルファイド、ジエチルサルファイド、窒素系化合物、低分子チオアルコール
○化学工業
 亜硫酸ガス、二酸化炭素、塩素、フ素、フ化水素、窒素、メリカプタン、硝酸、硫化水素、ブタン、パラフィン系炭化水素−など
○その他の工業
 アンモニヤ、アミン類、硫化水素、ジメチルサルファイド、ホルマリン、過酸化水素−など
○これ以外の排出物
 粉じん−石炭、芒硝(ぼうしょう)
 排水系−リグニン、繊維質、カ性ソーダ
*とくに、亜硫酸ガスは多くの工場から排出されており、漂白力が強く、しかも悪臭もしない難物で、今日の植物煙害の大部分を占めています。
児童の健康調査
 富士市医師会が中心になって、去る10月市立今泉小、田子浦小、富士第一小、鷹岡小の3年生1,600人を対象に「健康調査」を行いました。近くその調査結果が発表されますので、発表され次第お知らせします。
- 写真あり -
( 写真説明 ) 鷹岡小学校で

イオウ分のより低い重油を
富士川火力の燃料計画と排煙処理
〔燃料計画〕
 東電は、昭和46年度の1号機運転開始時に、1.5%のイオウ分含有の重油を使うことになっていますが、富士市の大気汚染の現状、火力の運転開始時における推移などから、イオウ分1.5%以下の良質な重油を使うように再検討すべきです。
〔排煙処理〕
 排煙は、高性能の集じん機によって処理がなされるべきです。また「脱硫」についても、通産省の「大型重要技術開発計画」の中で、その開発が急がれています。この技術は、重油火力発電所など、重油を大量に消費する施設に適したものです。近くその実用化が予測されますので、実用化の段階において、排煙脱硫処理をすべきです。このための用地もあらかじめ確保すべきです。

風向きほとんど南と北西、南西

富士地区の気象と風どう実験
〔気象〕
 富士地区の気象、とくに大気汚染に重要な要素をもつ「風」は、一般的に気圧配置に左右され、局地的な地形の影響をうけています。
 年間を通じて、もっとも多い風向は、南で、ついで北西、南西が多いようです。北東風は、富士山、愛鷹山の影響をうけて、吹きにくいと判断されます。
 風速は、全般的に弱く、平均風速は富士、吉原で毎秒2メートル、富士宮で1.6メートルにすぎません。また、逆転は秋から冬にかけて接地逆転層があらわれ、その高さも100〜200メートル範囲に出現するものと見られます。
〔風どう実験〕
 富士川火力(200メートルの集合煙突)の風どう実験では、四方向「主風向が西風(沼津方面)、北東風(清水方面)、南南東風(富士宮方向)、南西風(吉原方向)」全域にほとんど平均した拡散を示しています。
 この表でわかりますように、南南東方向については、地形の関係から多少近距離に接地点が見られ、また、南西方向の濃度の高いのは、愛鷹山体によるダウン・ドラフトの影響と思われます。
- 図表あり -

■ダウン・ドラフトとは
 風が吹くと建物などの背面にできるウズで、煙突が低いと煙が、このウズの中にまきこまれ、上昇しないで下降してしまいます。ダウン・ドラフトのウズ巻になる形は、風速がかわってもほとんど一定しています。
 なお、煙突の出口がウズ巻のすぐ上にあって、排ガスの速度がおそいと、ダウン・ウオッシュ(風速が強くなると、煙突の背面に負圧部分ができ、煙が煙突の出口より下ってくる現象です)によって煙が引き下げられ、このダウン・ウオッシュによって引き下げられた煙は、ダウン・ドラフトの領域に入ると一層下げられます。
 ふつう、ダウンドラフトとダウンウオッシュは、同時に起る傾向が多く見られます。
- 図表あり -
( 図表説明 ) ダウンドラフト現象

冷却水は5〜8度昇温するが
排水対策と水せい生物への影響
 発電工程上、最終時には日量345万立方メートルの海水を冷却水として用いることになっています。
 この多量の冷却用海水は、障害をなくすために塩素処理が行なわれます。また復水器過程において、水温は通常より8度、放水口で5〜8度昇温します。
 このため、技術的に可能な最善の処理方策をほどこし、水質汚濁を完全に防ぐ必要性を認め、いろいろけんとうしましたが、現在の計画でも、放水口における残留塩素濃度はまったくみられないと考えます。
 ただ、富士川に放流することの可否については、過去、この河川の災害状況や将来予想される諸問題を十分配慮して、治水防災の上から、建設省、静岡県でけんとおされ、決定されるべきだと思います。
 また、この温排水によって、海流域にせい息する生物への影響としては、環境の変化にともなう水せい生物の分布変動」が考えられます。

富士川火力……
施設への立ち入り調査権を
公害、防災対策の監視機関
 火力発電所のばい煙発生施設については、その大部分が大気汚染防止法の規制の対象から除外され、電気事業法の規定により、通産大臣の権限とされます。
 したがって、富士川火力建設に関する諸般の協議をされる場合は、公害、防災に対処するため、東電と合意の上で「富士川火力公害防災対策委員会(仮称)」を設置し、諸施設への立ち入り調査権を委員会に与えることはもちろん、公害防災対策の各種資料の提出を義務づけるなど、市が相当の権限を行使できるように措置すべきです
添付ファイル
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広報広聴課 (市庁舎8階北側)
電話:0545-55-2700 ファクス:0545-51-1456
メールアドレス:kouhou@div.city.fuji.shizuoka.jp
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