県東部および富士市の電力需給の現況と将来の予測
静岡県東部地区の昭和42年度の電力総需要量は29億5,282万キロワット時。しかし、発電量は1億4,407万キロワット(出力3.2万キロワット)と、わずか4.9%にすぎません。昭和45年度の需要は39億8,334万キロワット時、昭和50年度62億キロワット時、さらに、昭和60年度には144億キロワット時と予想されます。
富士市の電力需要量は、昭和42年度14億9,090万キロワット時に対し、昭和45年度20億24万キロワット時、昭和50年度30億1,000万キロワット時、昭和60年度72億600万キロワット時と推計されます。これらの供給体制は,京浜地区やその他から送電によりまかなわれていますがそれも、限界に達しています。こんご増大する電力需要に対応するには、どうしても、県東部地区に安定した電力供給施設を開発することが必要です。
*キロワット時とは、1キロワットの電力で1時間にする仕事の量です。
県東部に新たな電源開発が必要
静岡県総合開発計画
富士市総合開発計画と長期ビジョンとの関連
第6次静岡県総合開発計画における、東部地域の工業開発の構想は、昭和38年の工業出荷額3,519億円に対し、昭和45年8,215億円と2.33倍を見込んでいます。これにともなう電力需要量は、昭和39年の実績24億7,000万キロワット時に対し、昭和45年45億5,300万キロワット時と1.84倍を想定しています。また、第7次計画では、昭和60年の東部地域の工業出荷額2兆3,500億円と、昭和45年に比べ5.52倍を見込み、これに対する電力需要量は144億キロワット時とし、これをまかなうために、東部地域に出力260万キロワットの電源開発が必要であると指摘しています。
一方、富士市総合開発計画における工業出荷額は、昭和38年の1,318億円に対し昭和45年2,204億円。昭和50年3,262億円とそれぞれ1.67倍、2.48倍の伸びを予想しています。電力需要量、昭和39年の11億8,000万キロワット時に対し、昭和45年16億8,000万キロワット時、昭和50年19億3,900万キロワット時と、各1.42倍、1.64倍の伸びを推計しています。
富士川火力予定地域の土地利用については、国道1号線バイパス以南と、新幹線以南とにわけ、立地企業の規模に応じて、いずれも工業地帯として、計画的な利用をはかるべきです。
なお、長期ビジョン的には、昭和60年の工業出荷額を昭和40年の5.27倍の8.555億円を見込み、電力需要量も昭和40年の6.26倍の72億600万キロワット時とそれぞれ推計しています。
*富士市総合開発計画とは
昭和41年11月1日新市発足を目標に、昭和40年度から昭和41年度前期にかけて策定し、昭和50年度を目標とした、新しい富士市の姿を想定したものです。
*長期ビジョンとは
国の新全国総合開発計画ならびに県の第7次総合開発計画との調整をはかりながら、新しい視野にたって、昭和60年を目標年次とし、第2次富士市総合開発計画(仮称)として、これから策定しようとするものです。
- 写真あり -
( 写真説明 ) 調査事項を検討する富士川火力発電所対策特別委員会
出力105万キロワットは妥当と思うが
出力計画と用地計画
〔出力計画〕
富士川火力計画が予定どおり実施された場合、県東部地区電力需要のバランスは、昭和46年度(1号機運転開始)の最大需要78万キロワットに対し、48.6%の供給が可能です。昭和47年度(2号機運転開始)は83.6%、さらに、最終の3号機が運転開始される昭和50年度には90%となりますので、管内への供給体制はだいたい確立するものと予想されます。
したがって、計画の出力105万キロワット(35万キロワット3基)は、一応妥当なものと考えられます。が、こんご特殊な事情から現在の推計を上回る需要が発生しても、富士川火力では現在提示されている計画以上の出力は認めるべきではないと考えます。
〔用地計画〕
重要火力モデルプラントの用地規模は297,000平方メートル(90,000坪)と推定されています。富士川火力計画で標準用地452,100平方メートル(137,000坪)、特殊事情で増える用地267,300平方メートル(81,000坪)のあわせて719,400平方メートル(218,000坪)となっていますが、火力発電所単独設置による貯油タンク用地118,800平方メートル、取水、排水用地69,300平方メートル、環境保全のための緑地、芝地198,000平方メートルなどを考えると、必ずしも広すぎるとはいえません。
また、いたずらに縮小することは、環境保全の面からみて、決して好ましいことではありません。用地周辺の環境保全の具体策としては、東側に幅員16メートル、西側に9〜16メートル、北側に16メートルの都市計画街路をつくり、さらに、東側と北側には、緑地帯(グリーンベルト)を設けるよう配置すべきです。
用地区域は、東電の示した原案にこだわることなく、具体的には、市当局、関係住民、東電の三者が十分けんとおを加え、地元の意向を反映させるように措置すべきです。
施設の配置には十分な距離をとって
施設配置計画と用地計画
〔施設配置計画〕
富士川火力の構内施設配置計画は
1.発電施設(ボイラー、タービン、発電機、変電設備など)
2.貯油施設(重油タンク)
3.取水施設(冷却水)
4.排水施設
5.サービスヤード、緑地帯の5つに大別されます。
これらの施設は、公害、防災対策の上から、十分な距離をとって配置すべきです。とくに、住居地域である三四軒屋、靖国町への騒音、振動の排除。レクリエーション施設としての緑地帯の開放。取水や燃料搬入のために梅岸保全がそこなわれ、住民に不安感を与えないように、十分に対処すべきです。
〔用水計画〕
用水計画のうち、冷却用水日量345万トンの海水使用は、取水方法を除けば問題はありません。ボイラーなどに使用する淡水の昭和46年日量1,300トン、昭和50年日量5,000トンについては、ただいま建設中の東駿河湾工業用水道を使用する計画ですから、同事業の進行状況からみてこの使用は可能です。
生活用水(昭和50年に日量30トン)は本市の上水道を使用する計画ですが、これは、市営水道の水源確保の上からも供給可能と判断されます。
工事用に必要な淡水、日量400トンは、用地内の浅井戸により対処するようですが、これについては、地下水の塩水化の問題があるので、「岳南地域地下水利用対策協議会」でけんとおして措置されることが望ましいと思います。