蓼原の真言宗源立寺の本尊は聖(しょう)観音像です。源立寺といえば、北条氏政の首塚があるお寺として有名ですが、この観音像のことはあまり知られておりません。
この像は、北条の臣で小棹城主佐野新左衝門尉が、天正18年、小田原落城の後京都五条河原にさらされていた氏政の首をひそかに持ち帰り、この地に埋め、その時氏政の父、氏康の念持仏観世音菩薩を持ってきたものだと、いい伝えられています。
像の高さは約20センチくらいで、作者や年代はくわしくわかりませんが、藤原期のものではないかと伝えられています。
実に立派な神々しい仏像で、れんげの上にすわり、両手は合掌印を結んでいます。身は紫金色で、上に肉髪(につけい)があり、頂に円光があって、その中に500の化仏があるとされています。頂上に毘りよう伽摩尼宝という天冠があってその中に一つの化仏があり、眉間の白毫(びゃくごう)には宝石をはめてあります。
聖観音というのは、千手とか十一面、如意輪などの諸観音と区別するための名称で、もっとも普通な代表的観音という意味です。
一般に観音という場合には、聖観音をさすもので、正しくは聖観自在菩薩と呼ばれています。一切の衆生をその苦悩から救う観音として広く信仰され、あらゆる経典に説かれています。(鈴木富雄稿)
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( 写真説明 ) 蓼原の源立寺に安置されている聖観音