東柏原の地蔵堂に高さ70センチメートルの地蔵菩薩の立像が安置されています。
ここの像は不像で、漆塗りになっていますが、たいへんいたんでいます。左手に宝珠をもっていますが、右手は肘のところから取れているので、どんな印を結んでいたかわかりません。彫刻の線でみると、平安時代のものとも考えられます。
地蔵というのは、釈尊が入滅されてのち、弥勒慈尊が出世されるまでの56億7,000万年の長い間、無仏のこの世を救う仏だとされています。
そして、多くの仏様の中でこれほど庶民に親しまれている仏様はありません。優しいお顔は観音様とならんで、慈悲の権化ということができると思います。
丸い頭、袈裟衣(けさころも)をまとったお姿は、何んとなく親しみを感じます。6地蔵とよばれて、地獄道、餓鬼道(がきどう)、畜生道(ちくしょうどう)、阿修羅道(あしゅらどう)、人間界、天人界を救う、6種の地蔵にわかれています。
この地蔵堂のところには、むかし「浮島山延命寺」という、非常に大きなお寺がありました。その延命寺の山門にかかげられていた「浮島山」という山額は、京都の黒谷から宿場送りで運んだということが伝えられています。(鈴木富男稿)
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