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【広報ふじ昭和42年】ふるさとのでんせつ

立願渕 4

 昔、滝戸村の名主の長男の婚礼があり、100人前のおぜんを用意することになりました。
 孫の与兵衛は、披露宴がいよいよ明日に迫りましたが、おぜんやおわんがそろわず、近辺をたずね廻っていました。しかし、10人分のおぜんを持っている者もなく龍巌渕の所まで来たときは、すでに真夜中近くなってしまい、疲れ切ってしまいました。
 冷たい水で手足を洗い、一休みしながら「どうしようか」と思案しているうちに、昼間の疲れでいつのまにかウトウトと眠ってしまいました。
 すると夢の中に白ひげのおじいさんが現われ、「与兵衛よ!聞けわれは龍巌渕の主である。お前は正直者だから願いをかなえてやろう。あすの朝6時に大岩の上に立ち願い事をいえ。返す時は数をそろえて納めよ」といったかと思うと姿を消してしまいました
 ハッと、夢からさめた与兵衛は、不思議なこともあるものだと思いながら家に帰り、翌朝、大急ぎで大岩に行きました。そして「おぜんとおわんを貸してください」と大声で叫びました。
 すると、水面におぜんとおわんがポカリ、ポカリと浮かび上がり、たちまち望みの数だけそろい、祝宴をめでたく済ますことができました。おぜんとおわんは元の数だけそろえ渕に返しました。
 このことがあってから、村人たちは集りごとのあるときは、龍巌渕の主からおぜんやおわんを借りていました。そのころから、だれがいうともなく、この渕のことを「立願淵」と呼ぶようになりました。
 あるとき、隣村の名主の家で葬式があり、おぜんが足りないので立願渕の主からおぜんを借りました。しかし、返すときにどうしても一ツ足りません。多分分からないだろうとそのまま返すと、渕の水が急に大きなうずを巻いたので、使いの者は青くなって逃げかえりました。
 それからのち、村人たちがいくら願いをしても、渕の主はおぜんやおわんを貸してくれなくなりました。 (鈴木富男 稿)
- 写真あり -
( 写真説明 ) 立願渕=滝戸=
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